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「……どういうことだ、心?」


地を這うような低い声を出す彼氏。
そうだよね、でも私も状況が理解できてないの。
いい加減、この体勢もどうにかしたいし。
とりあえず、この誤解を解こうと口を開いた。


「べ、別にやましいことなんて、」

「ぬ……俺のこと、遊びだったのか…?」


寂しげにそう茶々を入れる彼。
待ってよ、私たち初対面だよね?
何もないよね?


「……心、俺だけじゃ不満だったのか?」

「な、違っ!」

「違うのか…?」


何がしたいんだ、こいつは…!
その彼の言葉にカチンときたのだろう、ガンっと大きな音がしてそっちを見れば、悲しみと苛立ちを足して割ったような顔をする彼氏がいて。


「もう、終わりにしようか。」

「ちょ、だから違っ、」

「言い訳なんか聞きたくない!」

「っ、」


明らかな拒絶を含んだ怒声に怯む。
もう、ほんとに終わりなんだって気付いて、涙腺が緩んだ。


「じゃあ、元気でな。
……鍵、ここに置いてくから。」


そう言って、私があげた合い鍵を床に置いて背を向けた彼氏……いや、元カレ、かな。

パタンというドアの音が更に寂しさを強調して、やる瀬なかった。





(「……っう、…ふ、」)
(「………。」)




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