噂は思いの外はやく伝わっちゃって、私はすごく居心地が悪い。 梓はあんまり気にしてないみたいで今まで通りに接する。 のに、なんでだろ……今まで通りが恥ずかしい。 さっきのことを意識しちゃうからか、梓の顔も見れないくらい。 でも、それを梓が許してくれるわけなかった。
「いい加減こっち向きなよ?」
「あ、あずっ、首痛い…っ」
「こっちを向かない司が悪い。」
理不尽だ!って叫んでどきどきを隠す。 でも、そこは小さいころからの付き合いな訳で。
「キスくらい、小さいころにいっぱいしたでしょ。」
「したけど! やっぱり違うじゃん、昔と今じゃ!」
ため息をつきながらそういう梓に力説する。 あのころはキスの意味なんて知らなかったわけだし、なんていうか、キスしたってカウントしないでしょ?
「僕は違わないよ?」
「……え?」
しれっと言う梓に思考回路が停止した。 違わない、って、どういうこと? そう思うと泣きたくなった。
「今も昔も、司が好きだからキスするの。」
「え?」
「ったく、勝手に勘違いして泣きそうな顔するなって。」
そう言って私のほっぺに手を伸ばした梓。 撫でるその手があまりにも優しくて、少しもどかしい。
「うわっ!」
「梓っ、好き…!」
「はいはい、知ってるよ。 でも、僕の方が司より好き。」
感極まって抱きつけば驚きながらも抱きしめてくれて。 精一杯の告白も、その何倍の甘い言葉で帰ってきた。 こんなやりとりを教室でやったからか、バカップルという称号を手に入れたのはまた別の話。
(「恥ずかしがったり悲しんだり喜んだり忙しいね。」) (「……梓が悪い。」) (「あ、今度は拗ねた。」)
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