「……ぬ、なんか居心地悪いぞ。」
「気にしないようにすればいいんだよ。」
「それができたら苦労はしないよ…。」
事の発端は生徒会長の挨拶。 お兄と私を名指しで生徒会に勧誘した会長のせいで、私たちは好奇の目に晒されている。 私はただでさえ少ない女子ってことで注目されてるのに、何考えて発言してるのかさっぱりわからない。
「で、2人とも生徒会室に行くの?」
「行きたくない。」
「行かないぞ。」
「ははっ、予想通りというかなんというか、」
梓の言葉に即答するお兄と私。 お兄ほどではないけど、私もあまり人と関わるのは得意じゃない。 梓とお兄がいれば、それでいい。
「ま、でもあの挨拶を聞く限りじゃあ会長が諦めるとも思えないけど。」
「その通り!」
ぐわし、と効果音がつきそうな勢いでお兄と私の肩を掴む誰か。 この声はもしかして。
「なーに帰ろうとしてるんだ、お前らは!」
「…………。」
「…………。」
「その目やめろ、傷つくぞ。」
ジトーッとした目で見れば、泣きそうな会長。 なんだかめんどくさい人オーラがぷんぷんする。 関わりたくない。
「離してください。」
「離したら帰るだろ?」
「離さなきゃ、痴漢って叫びますよ?」
「それはかなりイヤだが離さん!」
グッと力をいれる会長。 私は梓に助けを求めるように視線をやれば、仕方ないなって感じに会長を見る。
「翼……そのおっきい方は譲りますので、こっちの子は離してもらえますか?」
「ぬわっ、俺を売るのか梓っ!」
「犠牲はつきものだよ、翼。」
「仕方ない、今日はお前だけ連れていく。」
「ぬわわっ、やめろっ! はーなーせーっ!」
「いってらっしゃい。」
「お、お兄……。」
梓に売られたお兄は、そのまま会長に引きずられていく。 そのときに見た、爽やかな梓の顔は、きっと忘れない。
(「さ、行こうか。」) (「うっ、うん…!」) (「送ってくよ、ほら、カバン。」) (「大丈夫だよ?!」) (「いいから、カッコつけるくらいはさせて?」) (「あ、ありがと…。」)
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