お兄の隣を歩きながら、周りからの視線にジッと堪える。
やっぱり女は珍しいのか校舎に向かえば向かうほど、好奇の眼差しは増えていく気がして。
ぎゅっと、お兄の手を握った。
「ぬ、どうしたのだ?」
「……なんか、恥ずかしくて、」
「ぬはは、司は恥ずかしがり屋だもんな!」
「そ、そんなんじゃないもんっ!」
ガシガシと頭を撫でられた。
イヤではないけど、髪の毛ぐしゃぐしゃ。
不意に前を見れば、私の頭を撫でることに意識を向けていたお兄の前に人がいて。
「あ、お兄、前に人、」
「ぬわっ?!」
「ぅわっ?!」
「……え?」
遅かった、と思った瞬間に、ぶつかった人がはっきりと見えて。
さらりと流れる黒髪、少し小柄な体型、そして何より私の大好きな声。
「梓……?」
「翼に、司…?」
「梓…か……?」
それは、久しぶりに見た大好きな従兄弟の姿だった。
(「梓っ!」)
(「司っ!」)
(「ぬ、俺も!」)
(「わっ、ちょっ、お兄くるし…!」)
(「離してよ翼…!」)
(「ぬはは、ぎゅーっ、なのだ!」)
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