「おーにーいー?」
「ぬ? どうしたのだ?」
月子先輩と別れて、お兄の元に。
笑顔で声をかけたら首を傾げて不思議そうにしているお兄。
私はスッと息を吸ってから叫んだ。
「目上の人には敬語を使ってっていっつも言ってるでしょ、バカ兄!」
「ぬわわっ、びっくりしたのだ!」
「びっくりしたのだ、じゃない!」
まったく、何度同じことを言えばわかってくれるんだこのバカ兄は!
そうして声を荒げていたら、不意にポンっと頭にあたたかい重みを感じた。
「まぁまぁ、落ち着きなよ司。」
「梓…、」
「ぬははっ、助かったのだ梓!」
優しく頭を撫でてくれる梓のおかげで、少しだけ頭が冷えた。
どこかのバカ兄のおかげでまたイラっとした、けど。
「ねぇ翼、僕が司と翼のどっちの肩を持つと思う?」
「ま、まさか…!」
「説教の続き、僕がしてあげる。」
にっこり笑った梓から、なにか黒いモノが見えた気がする。
それを感じたのは私だけじゃないらしくて、ガタガタ震えたお兄に少しだけ同情した。
(「た、助けてくれ司…!」)
(「……何言ってんの翼?」)
(「ごめんお兄、自業自得じゃないかな。」)
(「なら目をそらすなーっ!」)
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