いつからだろう。
佳乃はたまに、すごく悲しそうな顔をするようになった。
「……桜、そろそろ散っちゃうね…。」
「うぬ……でも、来年になったらまた春に会えるのだ!」
寂しげに桜を見上げる佳乃に、そう励ます。
ほんとは今すぐにでも、桜を散らせないような発明をしたい。
でも、じぃちゃんが言ってたんだ。
“自然のものには、手を加えてはならん”って。
例えば桜みたいに、春っていう短い期間にぱぁっとキレイな花を咲かせるから、それは特別な意味を持つんだって。
アサガオに支柱をつけてやるとか、そういうのは大丈夫だけど、それ以上はしちゃいけない。
それが、風情ってやつなんだとか。
「春になったら会える、か…。」
「うぬ、だから一緒に春を待とう!」
ぎゅっと佳乃の手をとってそう言えば、佳乃はただ曖昧に笑ってた。
(「佳乃?」)
(「そういえば今日、お菓子持ってきたの、一緒に食べる?」)
(「お菓子? 食べる!」)
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