あれは、まだ俺が小さかったときのこと。
じぃちゃんやばぁちゃんと暮らしてた俺は、自分のことをただの邪魔者だと思ってた。
そんな俺の前に現れたのが彼女だった。
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
「わ、……!」
大きな桜の木の下。
彼女はキレイな薄ピンクのワンピースを身に纏っていて、まるで桜の妖精みたいだった。
さっきまでこぼれていた涙はとまり、ぱちぱちと彼女を見つめる。
「? おーい、大丈夫?」
「ぬ……俺は大丈夫、だぞ。」
「そっか!」
ふわりと、まるで花が咲いたように笑う彼女の笑顔に見惚れた。
ほんとのほんとにキレイだと思ったんだ。
「私の名前は染井佳乃。
あなたは何て言うの?」
「ぬぬ……翼、天羽翼、だぞ…。」
「翼くん、ね!」
眩しいくらいの笑顔に、ぎゅっと目を瞑る。
俺にはもったいないくらいの光を放つ佳乃と俺はこうして出会った。
(「何で目を瞑るの?」)
(「ぬ……それは、」)
(「もったいないよ、せっかくなんだからしっかり見て!」)
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