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「さくら、」


ざぁっと吹く風に、ひらひらと舞い上がるピンクの花弁。
この光景は、切なくて甘い、あの季節のことを思い出す。


「どうかしたの?」

「ぬは、なんでもないんだぞ!」


ぎゅっと書記の手を握って歩きだす。
書記には言えない、あの子のことを思い返しながら。





(また柔らかい風が、俺を包んだ気がした。)




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