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「何アレ、ムカつく!」

「まぁまぁ落ち着けよ、羊。」

「なに、錫也は悔しくないわけ?!」


弥生がよっぽど気に食わないのか、錫也に噛み付く羊。
月子は月子でかなり落ち込んでるし、俺は知らず知らずにまたため息をついていた。


「おい、哉太。」

「あ?」

「大丈夫か?」

「……あぁ。」


羊を窘めてから、俺にそう声をかける錫也。
ほんとはあんまり大丈夫じゃねぇけど、きっと俺より弥生の方がツラいだろうしな。
とりあえず今はそれよりも、だ。


「悪かったな、月子。」

「か、哉太が謝ることじゃないよっ!」


弥生の代わりに謝れば、月子は慌てながらそう言う。
あー……こんなん弥生が見てたら怒るな。
まず弥生からしたら弥生に非があるわけじゃねぇし、月子の言い方も言い方だな。
“哉太が謝ることじゃない”ってことは、俺以外に悪い人がいるってとれるし、それは必然的に弥生を示すわけで。


「……哉太?」

「あぁ、別になんでもねぇよ。」


心配そうに顔を覗き込む月子。
普段の弥生は言葉のあややトゲも、笑ってすごすくらい寛容だから、弥生が月子のどこを気に入らないのかはイマイチよくわかんねぇ。
けど、月子が弥生と仲よくしたいっていうなら、なんとかしてやりたいって思う。

こんな男だらけの学園なんだ、弥生だって不安とかあるはずだ。
月子が弥生を嫌ってるならムリにとは言わねぇけど、やっぱり女は女と一緒にいてる方がいいと思うのは、俺のエゴってヤツなんだろうか。





(「あー、どうしたもんかなー……。」)
(「もう関わんなきゃいいよ、あんな女。」)
(「こら、他人の彼女を彼氏の前で貶さない。」)




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