「おい。」
食堂で、確か月子と同じ部活の奴ら2人と昼飯を食ってる弥生を見付けて声をかける。 そしたら弥生だけじゃなくてその2人も俺を見てきてちょっと気まずい。
「なに、哉太。」
「……なに、って…用がなきゃ声かけちゃいけないのかよ。」
俺が素っ気なく声をかけたからか、少し不機嫌な感じで返してくる弥生。 なんだか俺が間違えてるみたいで、また素っ気なく返しちまったのに、弥生を見ると少し嬉しそうな雰囲気。 正直、ものすごくかわいい。
「べ、別にそんなこと言ってないけどっ、」
「けど、なんだよ?」
ちらりと一緒にいた2人に視線を送れば、アホっぽい方が「どうぞー」みたいなジェスチャーしてきたから遠慮なく座る。 それから質問の答えを聞こうと弥生をみれば、一生懸命言う言葉を考えていた。
「弥生?」
「う、うるさいなぁ!」
意地が悪いとはわかっていても、追い打ちをかけるように弥生の名前を呼ぶ。 するとうっすら頬を染めた弥生が、ヤケになって大きめの声を出した。 幸い食堂はガヤガヤとうるさいからその声は周りのごく一部にしか聞こえてないみたいだけど、弥生は恥ずかしいのか少し小さくなる。
「ば、ば哉太!」
「俺のせいかよ?」
「そうだよ、哉太のせいだから!」
羞恥心からか、さっきよりも赤みを帯びた弥生の顔。 ヤバ、頬が緩みそう。 そう思ったときだった。
「あっ、哉太!」
「……うわ、西城もいるじゃん。」
「こら羊、そういうこと言わない!」
食堂に来たあいつらの声が聞こえた。 その瞬間に弥生の顔から一切の表情が消える。 あぁ、またか。 そう思った俺は重いため息をついた。
(「私、戻る。」) (「ちょっ、弥生!」) (「いいのか、西城?」) (「龍くんもやっくんも残ってていいよ。」) (「いや、俺は弥生ちゃんについてくよ!」) (「む、俺もだ。」) (「……ありがと。」)
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