[]




やっぱり俺は、臆病で。
一歩が踏み出せない。


「……………。」


さっきからずっと、携帯と睨めっこ。
いや、どちらかっつーと携帯のボタン……って、何の話だ!
じゃなくて!


「ーっ、押せねぇ!」


あとは通話ボタンを押すだけ、なのにそれができなくて。
もし出てくれなかったらどうしよう。
冷たくされたらどうしよう。
そんな“どうしよう”が俺を一段と臆病にする。


「………向こうから、かけてくれりゃあいいのにな…。」


ついにはこんな呟きまで出てくる始末。
自分が情けない、そう思った瞬間。


ぴりりりり、ぴりりりり


携帯が着信を知らせる。
短いそれは、メール?


「っ!」


受信ボックスを開いて目を見開いた。
それはあいつ、錫也からのメールで。

俺は上着を掴むと、それを着て、適当に貴重品を持ってから部屋を出た。
目指すは屋上庭園。





(「(今すぐ屋上庭園にきてくれ、か……なんなんだよ、あいつ…。)」)




- 1 -
*PREVNEXT#