「おかえりー、どうしたの急に出ていって?」
「ん、ちょっと、ね。」
後ろ手でドアを閉めてから、やっくんの傍に向かった。 龍くんは部活がどうたらで陽日先生に呼ばれていないらしい。 ふむ、しょうがないな。
「んで、弥生ちゃんはどこ行ってたの?」
「ふふ、秘密ー」
えー!って、不服そうな顔をするやっくんを笑ってごまかす。 だって言えないでしょ、哉太に会いに行ってたなんて。
小さな頃から、何故か哉太が1人のときとか、悲しいときがわかってしまう。 どうして、なんてわからない。 ただなんとなく、哉太に会いたくなるんだ。 哉太のSOSサインを受け取ってるみたいに。
今回、ほんとは行くのを躊躇った。 行ってもいいのか、すごく不安だった。 でも会いたくて会いたくて、堪らなかった。 これが私の気持ちなのか哉太の寂しさなのかはわからない、でも居ても立ってもいれなくて、教室を飛び出した。
それからはあんまり覚えてない。 ただ、哉太を見たらまた泣いてて。 やっぱり哉太は私がいなきゃダメダメだな、なんてバカなことを考えた。
抱きしめられて、ほんとはすごく嬉しかった。 あんなに近くで哉太を感じたのは、久しぶりで、なんだか私が泣きそうになった。
なんで離れてから、優しくするんだろう。 期待……してもいいのかな…?
………なんちゃって。
(「む、西城!」) (「あっ、龍くんおかえりなさーい。」) (「お疲れー」) (「別に、少し話をしただけだ。」)
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