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聞こえてしまった会話に胸が痛む。
僕も、こんな気持ちになれるなんて……。


「そらそら?」

「……あぁ、翼くん。」

「どうしたのだ?」


いきなり立ち止まった僕を、不思議そうに見る翼くん。
僕はいつもの笑顔を貼り付けて、翼くんの背中をグッと押した。


「ぬわわわっ、何するのだっ!」

「しーっ、会長があそこで何やらいい雰囲気なんです、邪魔者は退散しましょう。」


なんて、ほんとは僕が見たくないだけなんですけどね。
なんとなく、弥生さんがまだ七海くんを好きな気はしていました。
ですが、別れを切り出したのが弥生さんだと聞いて、少しだけ期待したんです。
僕にもチャンスがあるんじゃないか、と。

そんな僕の期待は、あっさり裏切られたわけなんですけどね。
ほんとは、会長の代わりに僕が抱きしめてあげたいのですが、一度彼女のぬくもりを抱きしめてしまったら、背中を押すなんてできないでしょう。
それは、弥生さんのためにならないから。

だから今だけ、会長に花を持たせることにしましょうか。





(「そらそらいつまで押すのだっ!」)
(「生徒会室まで連行、です。」)




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