「弥生!」
「わっ、かずくん!」
星月先生への用事も大したことじゃないし、星月先生といたらまた天文科組と会いそうだったしでぶらぶらと校舎内を歩いく。 そしたら急に、大きな声と一緒に肩を掴まれてびっくりした。
「久しぶりだな!」
「ちょっと前に同じこと言ってたよね。」
「会ったのって結構前じゃなかったか?」
私の言葉に首を傾げるかずくん。 よく考えたら最近とずっと前の間くらいだったから、とりあえず笑ってごまかしといた。
「それよりお前、なんで七海と別れたんだ?」
「直球だよね、かずくんって。」
「まどろっこしいよりはいいだろ?」
ニヤリと笑うかずくんに思わず笑ってしまう。 かずくんらしいよなぁ、そういうこと。
「月子か?」
「ん、まぁ……一概には言えないけど、そんなとこかな。」
月子が原因、といえばそうだけど、月子が悪いってわけじゃないしな。 私が月子以上の魅力があれば、それか強ければ、別れなくて済んだ。 全部、私がダメだったから。
「……お前まだ七海が好きなんだろ?」
「……なんで、そう思うんです?」
「鏡見てみろ、ばか。」
ぐしゃぐしゃと強めに頭を撫でるかずくん。 その手があまりにも優しくて、なんだか泣きそうになる。
「泣きたいなら泣けばいい、でも後悔の涙なんて流すモンじゃねぇよ。」
「か、ずく…っ、」
「なんで、好きなのに手放すんだよお前らは、」
ぎゅっと抱きしめてくれたかずくん。 その服を、縋るように握ればそんな言葉が聞こえてきた。
泣いてるせいで頭がぐちゃぐちゃな私には、かずくんの言った“お前ら”に気づくことはなかったけど。
(「難儀だよなぁ、ほんとに。」)
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