「ねぇ、月子。」
「なぁに?」
星月先生を探し歩いていると、不意に羊くんが声をかける。 顔を見上げてみれば、真剣な表情で。
「聞きたいこと、あるんだけど……いい?」
「うん、いいよ。」
「あのね、西城のこと、教えてほしいんだ。」
「! 弥生ちゃん?」
羊くんの口から飛び出した弥生ちゃんの名前に、心臓が跳ねた。 思わず立ち止まってしまって、羊くんも一歩前で止まって振り向く。
「あ……弥生ちゃん、はね、」
「うん。」
少し嫌な感じに高鳴る心臓を必死に隠して笑顔を作る。 それからゆっくり、言葉を選びながら紡いでいった。
「幼稚園から同じでご近所さんだったんだけど、小さい頃から私は錫也と哉太と3人でいたからあんまり仲がいいってわけじゃなかったの。」
「あれ、でもならなんで哉太とは仲よくて月子とはそんなになの?」
「んと……ね、哉太が言うには、哉太が寂しいって思ったときに、いつも傍にいてくれたみたいなの。」
私と錫也は、それこそ四六時中一緒にいたような気がする。 でも哉太はやっぱり病気のせいで、そんなわけにはいかなかった。 ずっと傍にいたかったけど哉太が行けって笑顔を見せるから……ううん、これは言い訳。 哉太なら大丈夫、って。 あとで外であったこと話せば笑顔を見せてくれるから、安心してた。 その哉太の寂しさに気付いた弥生ちゃんが、私たちが傍にいてない間、私たちの代わりにって傍にいてくれてたの。
だから哉太は弥生ちゃんを慕ったし、哉太の寂しさに気づかずにずっと笑ってた私が許せないんじゃないかな。
(「ふーん、でもやっぱり月子を敬遠してるのは西城の逆恨みでしょ?」) (「でも、哉太を傷つけてた私も私だから、ね。」)
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