哉太と、2人きりの保健室。 いつもは哉太がベッドなのに、今日は俺がベッドにいて。
「あの、さ。」
「なに?」
「……弥生の、ことなんだけど、」
歯切れの悪い哉太に、小さなため息。 くると思ってた、だけど何を言われても俺の中の弥生の位置がかわることなんてない。
「なんていうか……弥生は、錫也が思うような奴じゃないぜ?」
「いやだな、俺は別に何も思ってないよ。」
哉太の言葉を、やんわりと否定する。 その言葉と俺の顔をみた哉太が、ゆっくりと顔をしかめて。
「……俺、弥生が月子を敬遠する理由も、錫也とか前の羊が弥生を毛嫌いする理由も、全然わかんねぇ…。」
急に俯いたと思えば、震えた、泣きそうな声で言葉を紡ぐ哉太。 いつも思うんだ、哉太は純粋すぎる。 誰かに黒い感情を抱くのなんて、生きてれば誰にでも有り得ることで。 でもそれを知らない哉太は、こうやって傷ついてしまうんだ。
みんな仲よく、なんてムリだろ? 哉太だって、初めは羊と反発したんだから、そのことはよくわかるはず。 いろんな意味で素直な哉太みたいに、まっすぐな意思表示をしていける奴なんて、稀なんだ。
「俺、錫也が知らねぇ弥生のいいとこ、いっぱい知ってる。」
「哉太、」
「弥生の知らねぇ月子のいいとこだって、知ってる。」
「………、」
「どうして知ろうともしないんだ…っ、どうして毛嫌いするんだよ!」
悲痛な哉太の叫びに、思わず黙り込む。 ふと見た哉太の顔は今にも泣きそうだった。
(「……別に弥生を嫌ってなんか、」) (「もう嘘なんていらねぇよ!」) (「……哉太、」) (「なんでだよ、意味わかんねぇ…!」)
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