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「っ!」

「……哉太?」


哉太と2人で購買に行った帰り道。
いきなり哉太が立ち止まったおかげで、僕も立ち止まる。
返事をしない哉太の視線の先に、哉太がフリーズした理由が見えて内心ため息。
まだ引きずってるの、あんな女のこと。


「哉太。」

「………。」

「ねぇ、哉太。」

「……。」

「哉太っ!」

「ぅおっ?!」


大きい声で、ようやく僕の呼びかけに気がついた哉太。
いつもと違う道で行こうってことにしたのが、まさかこんなことになるなんて哉太も思ってなかったみたいで、すごく寂しそうな気まずそうな顔を向けられた。


「そんな気にしなくていいじゃん、あんな女。」

「だから、あんな女言うなっ!」

「あんな女はあんな女だよ、あんな女に引っ掛かってる哉太よりマシだけどね。」

「んだとっ、羊こらてめぇっ!」

「何、ほんとのことじゃんか!」


ついムキになって大きな声を出す。
だってあんな女がいなかったら、哉太はこんなにならなかったし、月子も傷つかずに済んだ。
みんなの幼なじみだかなんだか知らないけど、あんな奴を月子や哉太や錫也と同じだなんて、僕は認めない。


「いい加減にしてよ。
もう目を覚ましていい頃だよ、哉太。」


哉太がいなくても、あいつは何一つ困ってない。
それにもう別の男見つけてヘラヘラしてる。
それなのに、哉太はまだあんな女が好きだっていうの?

どうかしてるよ、そんなの。





(「お前こそいい加減にしろ、羊!」)
(「哉太のっ、哉太の分からず屋!」)
(「分からず屋はお前だろうが!」)
(「何それ、意味わからないよ!」)




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