「弥生ちゃん、やっぱり無理してるよなー…。」
「白鳥もそう思うか。」
「そりゃねぇ。」
部活の合間に、そんなことを話す。 俺らが西城の心配をしていることに、果たして西城は気付いてるのか。 別に、気付かれたくて心配しているわけではないが、西城は他人に甘えなさすぎる気がする。 だからこそ、自分のことを大切にしないとまではいかなくても、無茶をするんだ。
それが、不安なんだ。 いつか西城が壊れる気がして。
「よーお前ら、何の話してんだ?」
「ぐわっ、お、重いぞ犬飼…っ!」
「ははっ、よかったな、生きてる証拠だ!」
「どうでもいいから体重をかけるな…っ」
いきなりきて、白鳥と俺の肩に腕を回してグッと体重をかける犬飼。 地味に重いぞ、こいつ。
「ひ弱だなーお前ら。 まぁいいや……で、何の話してたんだよ?」
「あぁ……お前も知ってるだろう、夜久の幼なじみの女子生徒。」
「あー、確か西城、って言ったっけ?」
「そうそう、その子俺らと同じクラスで結構仲いいんだよな。」
「宮地だけならまだしもほんとにお前もか?」
「失敬なっ!」
ニヤニヤと、いつもの笑顔で白鳥に突っ掛かる犬飼。 こいつら2人は集まると途端に騒がしくなるから厄介なんだ。 そう思ってため息をつけば、2人ともビクッと肩を揺らして俺を見る。
「む、俺がどうかしたのか?」
「い、いや……まぁそれよりも、だ! 西城っていや、確か七海と別れたらしいよな?」
「! あ、あぁ。」
何気ない犬飼の言葉に、今度は白鳥と俺が肩を揺らす。 別に犬飼に悪気があったわけじゃないとしても、俺らの中では“七海”と“別れた”は暗黙の禁止ワードだった。 そんな俺らに気付いてないのかスルーしているのか、犬飼は意外なことを言葉にした。
「青空、って副会長知ってるよな? 西城、確か青空とすっげぇ仲いいから、七海やめて青空にしたんかね?」
「……え?」
「……犬飼、それは本当か?」
ガッと犬飼の肩を掴んで問う。 犬飼は「いや、あくまで俺の考えだから」とだけ言っていた。
(「そうか、青空か。」) (「まぁ青空だったら安心だよなー。」) (「まぁ、西城の選んだやつにとやかく口出しするつもりはないけどな。」) (「それでも副部長も心配だったんだろ? 眉間のシワ、いつもよりちょっと減ってる。」) (「む、そうか…?」)
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