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ただ笑っていてほしい。
そう思うのは、傲慢でしょうか。


「……と、まぁこんな感じです。」

「わーっ、すごい!
私、颯斗くんのピアノすっごく好き!」


その言葉を皮切りに、次々と感想を身振り手振りで伝える弥生さん。
見ているこちらが思わず笑顔になるほど、とても純粋な表情に僕まで笑顔がこぼれます。


「貴女は、本当に純粋に僕の音楽を楽しんでくれますよね。」

「え、あ……ごめんね!
ちょっとはしゃぎすぎたよね…。」

「いえ、そういう意味じゃないですよ。」


そう言って笑いながら、ピアノから少し離れたイスに座る弥生さんの元に行く。
それからきゅっと弥生さんの両手を握りしめた。
あたたかくて柔らかい、優しい手。
まるで弥生さんそのものを表してるようだ。

きょとんとした目で僕を見上げる弥生さんに、クスリと笑みがこぼれる。
もし、ここで僕の胸のうちを明かせば、彼女はどんな反応をみせてくれるのでしょうか。





(「あ、あの……颯斗、くん?」)
(「なんでしょうか?」)
(「え、えっと、その、手が、ね……うん。」)
(「ふふ、何のことかわかりませんね。」)




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