「あ、颯斗くん。」
「おや、弥生さん。」
放課後、珍しく颯斗くんにばったり出会った。
颯斗くんとは基本、生徒会室くらいでしか会わないからなんか新鮮。
「今日は生徒会休みなんだ?」
「はい、今は特にすることもないので。」
「そっか、じゃあ音楽室に行くのかな?」
「えぇ、久しぶりに1曲弾こうかと……弥生さんも来ますか?」
「え、いいの?」
「えぇ、もちろん。」
にっこりと、人当たりのいい笑顔で答える颯斗くん。
普段はあんまり人を寄せつけないのに、どうしたんだろう。
そう思うんだけど、颯斗くんの演奏はすごく好きだし、ラッキーと思って二つ返事で了承した。
「あ、私あの曲聞きたいな!」
「あの曲……もしかして北極星の涙、ですか?」
「うん、それ!」
「ふふ、いいですよ。」
柔らかな笑顔でさりげなくエスコートしてくれる颯斗くん。
なんていうか、紳士的なオーラがすごいよね。
そんなことを思いながらも、颯斗くんと遠くも近くもない音楽室へ向かった。
(「それではご希望通り、北極星の涙を。」)
(「ふふっ、よろしくお願いします。」)