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懐かしい夢をみた。
あれはまだ俺らが幼稚園だった頃。
特別仲いいってわけじゃないけど、俺ら3人と弥生は同じクラスだった。


「またないてる。」

「! な、なんだよ!」

「ほら、なかない。」


体調が悪くて1人で休んで泣いてると、必ずきて慰めてくれた女の子。
それが弥生。
いつもあいつらがくる前にどっかいくから、4人で話したことはなかったけど。

ある日、いつもいつも泣いてばっかだと思われるのも嫌だったから、どんなに1人でも泣くもんかって決めた。
1人の時間は寂しくて怖かったけど、グッと唇を噛み締めて耐えていたそのとき。
また弥生がきた。


「きょうはないてないんだからな!」

「……ほんとだ、えらいね。」


ジッと俺の顔をみたあとに、ふわっと笑ってそう言った弥生。
それからよしよしと俺の頭を撫でて、「でも、わたしのまえではがまんしなくていいんだよ。」って言った。
なんかそう言われた瞬間に、堪えてたものが壊れて弥生に泣きついたんだっけな。
それを弥生は優しく笑いながら「よくがんばったね、えらいね」って抱きしめてくれた。

それで俺が落ち着くまでずっと背中を撫でてくれてた弥生が、スッと離れた。
なんだと思って弥生を見れば、少し悲しげで寂しげでツラそうな顔をする弥生がいて。


「ごめんね、わたしそろそろいかなきゃ。」

「……っく、なん、でだよ…!」

「ごめんね、でももうだいじょーぶだから。」


そう言って最後に頭を撫でて離れて行った。
それから間もなく月子と錫也がきて、俺は2人を迎えた。

楽しそうにさっきあったことを話す2人といるのは楽しい。
けど、寂しいときに必ず傍にいてくれる弥生を好きになるのにそう時間なんてかからなかった。

これが俺の、長い片想いの始まりであり、こんな苦い想いをするきっかけだった。





(「(あいつなら黙って俺の傍にいてくれるだろうっていう先入観が、俺の中にあったのかもしれない、な。)」)




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