授業の終わりを告げるチャイムが鳴ったけど、こんな顔じゃみんなのとこに戻れない。 だから、龍くんとやっくんにメールしてどっちかに寮に持ってきてくれるように頼んで、1人帰路についた。 ほんと申し訳ないんだけど、2人ともすぐに了解のメールをくれて、なんだかまた泣きそうになって。 とりあえず、クッキーでも焼いて待っとこうと思う。 そうして少しだけ頬を緩ませなが歩いてると、後ろからガッと肩を掴まれて。
「なぁ。」
「! なに。」
無理矢理振り向かされた先に立っていたのは、錫也で。 普段は私とあまり話をしない彼だったから、ものすごく驚いた。 それに、私の顔をみても顔色1つ変えない錫也に言いようのない何かが渦を巻く。
「哉太、いないんだけど知らない?」
「……知らないわよ。 大体、なんで私が哉太の居場所をいちいち把握しなきゃいけないの。」
決して多い言葉数じゃないのに、なにか呑まれそうになる雰囲気を醸し出す錫也が怖い。 虚勢を張っても、それすら無意味な気がして。
「ははっ、そんな言い方はないだろ? お前、哉太の彼女なんだから知ってるかと思ったんだよ。」
「……もう、彼女じゃない。」
「………は?」
「だから! もう付き合ってない!」
私の言葉に目を見開いた錫也。 少し緩まった手を払いのけて、錫也をキッと睨みつける。 錫也はまだ情報整理できてないのか、将又したくないのか。 とにかく呆然と私を見ていた。 ………いい気味。
「哉太にも言ったけど、もう関わらないで。」
「何、言ってるんだよ。 冗談だよな…?」
「冗談? バカにしないでよ。」
鼻で笑って否定すれば、すごく悲しそうな顔をする錫也。 その顔も、哉太や、こうして私に冷たくあしらわれた可哀相な月子のためなんだから腹立たしい以外は何も感じない。 私はそのまま錫也に背を向けて歩きだした。
(「……なんでこんなことに…とにかく、哉太を探すか。」)
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