「父の日って影薄いよな。」
「え?」
何の脈絡もなく、不意に漏らした会長の言葉に間抜けな声を漏らしてしまう。 自分の作業をやめて会長に目を向ければ、こちらに背を向けてぼんやりと外を眺めている姿が目に映った。
「母の日って結構みんな覚えてるし祝ってくれるけど、父の日って忘れられがちだなーってふと思ってな。」
くるりとイスを回してこちらに目を向けた会長が、背後から射し込んだ夕陽も助長して悲しげに揺れていて。 思わず吹き出してしまった。
「え、おま……笑うとこか?!」
「ふっ、だ、だって…!」
込み上げる笑いの中に愛しさも混じって口元がニヤける。 それを抑えて会長に近づけば、少しだけむすっとしてる会長。
「ふふ……会長って結構お父さんポジション気に入ってますよね。」
「……悪いか。」
「拗ねないでくださいよ。 ……はい、そんな会長に父の日の贈り物です。」
「え…?」
「いつもありがとうございます。」
コトリとプレゼントの箱を机に置く。 その箱と私の顔を交互に見遣る会長にまたクスリと笑えば、照れくさそうに笑って一言「ありがとう」って伝えてくれる。 それじゃあ本末転倒だな、って思ったけどそこが会長らしいし、何よりそれこそ私が惚れた姿そのものなわけで。 気を利かせて私たちを2人きりにしてくれたみんなに感謝かな、なんて。
感謝と愛を込めて (会長[お父さん]に伝えたいんですよ。)
*父の日、ですね……書けないと思った…。 頭捻りまくった結果がこれって……これって…。
2012.06.17 父の日
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