朝、トントンと一定のリズムを刻む包丁の音で目が覚めた。 あたたかな音に、自然と頬が緩んだのがわかる。
しばらくその音に耳を傾けていると、不意に音が止んだ。 それからぱたぱたと小さな足音。
「あ、一樹さん起きてたの?」
「あぁ、ついさっきな。」
キィっと音を立てて開いたドアから顔を覗かせたのは名前。 俺の、俺だけの愛しい嫁さん。
寝転んでたベッドに座り、とことことこっちに来た名前を抱き寄せれば、ふわりと香った柔らかい匂い。 それを堪能するため、名前の首元に顔を埋めた。
「ふふっ、くすぐったい。」
「んー……、」
くすくす笑う名前の声に曖昧に返事をする。 まぁ、俺が離す気がないのはわかってるだろうから問題はない。
「あ、そうだ一樹さん。」
「なんだ?」
「お誕生日おめでとう。」
ちゅ。
もぞりと名前が動くから少しだけ腕の力を抜いたら、目の前にドアップの名前がいて。 唇から伝わる熱に、少し泣きそうになった。
「さ、ご飯食べよ? 私、今日はいつもより力いれて作ったの!」
「あぁ、そうだな。 ……いつもありがとう。」
パッと俺から離れてそう言った名前に、仕返しのキスをした。 案の定、顔を真っ赤に染める名前に少しの優越感。
ちょっとむくれた名前の頭をわしゃわしゃと撫でてやれば、それだけで笑顔を浮かべてくれて。 それがあまりにもかわいいからもう一度キスすれば、困ったように怒られた。
幸せの音 (どんなに些細な音も、俺にとってはかけがえのない大切なもの。)
*会長、お誕生日おめでとー!
甘い=新婚、みたいな。 撃沈でしたね、すみません。
2013.04.19 一樹誕
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