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「あ? 名前?」


明日は休みだし、のんびり寝ようかと思った金曜の夜。
突然の来訪を知らせるインターホンが鳴ったから玄関に行けば、少し気まずそうな名前がいて。
あ、ちなみに名前は俺の自慢の彼女。


「あ、あの、さ、」

「なんだ?」

「だから、そのっ、」


名前にしては珍しく歯切れの悪い口調に首を傾げる。
とりあえずこんなとこで立ち話しても仕方ないから家にあがれって言えば、ただ無言で頷いた。
……なんか怪しい、何を企んでるんだ?
そう思いながら廊下を名前の前に立って歩く、と。


「……お?」

「ちょっと、待って…!」


クイっと服の裾を引っ張られたせいで立ち止まる。
何やら必死そうな名前の声に振り向けば、顔をこれでもかってくらい染めていて。


「あ、明日とか、暇?」


上目遣いでそんなことを言ってきた。
多少の贔屓目もあるけど、名前はなかなかかわいい部類なわけでそれはとにかく俺の胸を撃ち抜いた。
あ、今言い方古いとか思ったか?
ほっとけ。

「あー……まぁ暇だな。」

「ほんとっ?!」


心の動揺を悟られないように答えれば、きらきらと輝く名前の目。
この笑顔のときは、たいてい俺の心臓によくないことが起きる。
たらりと冷や汗が背筋を伝ったときだった。


「あのさ、泊まってもいい、かな…?」

「はぁ?」

「お願いっ、……ダメ?」


手を目の前で合わせて頼み込む名前。
そんな姿に折れてしまうのが俺なわけで。


「……仕方ねぇな…。」

「ありがとうっ!」


ため息をつきながら言えば、ほんとに嬉しそうにする名前。
聞けば、友だちにジェイソンの話を聞いて、1人が怖くなったらしい。
つまり、名前がこのことを忘れない限り、また別の13日の金曜に泊まりにくるってことか。
そう思うと嬉しいような、我慢できるか不安なような複雑な気分になった。



13日の金曜日
(「やっぱ隆文の服、おっきいねー。」)
(「……なんで自分の服持ってこねぇんだ…。」)





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