「む、」
「ごっごめんなさい!」
怖い。 それが私の中の彼の印象だった。 でも仕方ないよね、いっつも眉間にシワがあるし怒鳴ってるし。 あの1年の子……木ノ瀬くん、だっけ? 怖いもの知らず、って彼みたいな人を言うんじゃないかな。
なんて現実逃避。 でもいきなり「む、」って言われても、怖いだけなんだもん。
「なぜ謝る。」
「だ、だって怒ってるんでしょ…?」
「別に怒ってない。」
どこか小さい子みたいに拗ねる宮地くんからはいつもの怖さ、が…ない? 少し下がった眉はちょっぴり悲しそうな印象もあって、心なしか力が抜ける。
「えと、ごめんね…?」
「む、何がだ?」
「いや、その……怖がった、から?」
「疑問形なのか。」
フッて力を抜いたように笑う宮地くんに戸惑う。 今まで、怖い怖いと近寄らなかったから、こんな風に笑うなんて知らなかった。
「む、なんだジロジロみて。」
「え? あっ、ご、ごめんねっ…!」
「……謝るのは癖か。」
「う、そう、かも…。」
ついジッと見ていた視線を慌ててそらして謝ったら、そんなことを言われた。 まだ体は宮地くんのこと怖がってるみたい。 でもそんなこと言えないから、苦笑する。
「少しずつ怖がらないでくれたら……嬉しい。」
「み、宮地くん…?」
「っ、すまん、またあとでな…!」
たぶん、無意識にこぼしたんであろう宮地くんの言葉にどきどきと忙しなく高鳴る胸。 さっきまで苦手だったくせに、現金なヤツだな、私。
好きと苦手は紙一重 (「それを言うなら、“馬鹿と天才は紙一重”ですよ、やっぱりバカですね先輩は。」) (「き、木ノ瀬くん…!いつからそこに?!」)
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