[]




「こーたちゃーん……あれ、起きてる。」


ガラッと音を立てて開くドアと間延びした俺を呼ぶ声。
最後の失礼な言葉は聞かなかったことにするとして、何度呼び方を注意すればいいんだ。
無駄だとわかっていても俺は呆れ顔で訂正する。


「星月先生、と呼べ。」

「やだ、こたちゃんってそんな趣味?」

「どんな趣味だ。
俺は一応保健医だ、それなりの敬意は払え。」

「自分で一応、っていうんだ。」


くすくす笑う名前。
つけなかったらつけなかったで「職務怠慢のくせに」って笑うだろうに、どうしろっていうんだ。


「こたちゃん、こたちゃん。」

「なんだ?」

「ふふ、ベッド借りていい?」

「サボりなら帰れ。」


そう言ってお茶を飲む。
ちなみにこれは自分でいれたから、決してまずくはない。


「じゃ、失礼しまーす」

「はぁ……あんまり保健室をサボり場所にするんじゃない。」

「むっ、サボりじゃないですよ。」


ベッドに向かう名前にそう声をかけたら、意外な返事。
体調、悪かったのか?
そんな俺の気持ちを見抜いたのか、将又、ただ単に言いたかっただけなのか。
とにかく名前は笑顔で爆弾発言をした。


「私、授業中とか、こたちゃん思うと胸が苦しくって。」

「は?」

「今だって、すっごくどきどきしてどうにかなっちゃいそうなんです。」


だから、ベッド借りますね。って笑顔で言われてしまった俺はどう反応すればよかったんだ。
とりあえず、顔の赤みがとれたら思いっきり逆襲してやろう。



病名、恋の病。
(「ふふ、こたちゃん顔赤くなってる。」)
(「お前もだろ。」)




- 1 -
*PREVNEXT#