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梓くんは意地悪だ。


「ねぇ、翼くん。」

「ちょっと、今から翼と話そうと思ってたんだけど。」

「ご、ごめんね。」


こんなこと、日常茶飯事だし。
ちなみに言えば、翼くんだけじゃなくて他のクラスメイトとか、先輩たちに対しても同じ。

そんなに、嫌われてたのかなって思うと、悲しくなる。
私は梓くんのこと、好きなのに。


「ねぇ、」

「なっなに?」


いつからかな?
梓くんの「ねぇ、」が怖くなったの。
また何か言われる、そう思うだけでぐらぐら揺れる。


「え、ちょっと!」


あ、ダメ、ふらふらして気持ち悪い。
そう思いながら私の意識は飛んでいて。


「ん、」

「気がついた?」

「あ、あず、あず、梓くん?!」

「うるさい。」


気がついたらベッドの上で、すぐ傍には梓くん。
なんでベッド?とか、なんで梓くんがここに?とか。
疑問は尽きないけど、うるさいって言った梓くんの顔がほんとに鬱陶しそうだったから、何も言えなかった。


「あのさ、」

「は、はい!」

「体調、悪いならはやく言いなよ。」

「え、っと…?」

「倒れた原因、過労とストレスだってさ。」

「倒れ、た?」


梓くんの話についていけなくて首を傾げるけど、私がベッドにいる理由が倒れたからだ、って気付いて、なんだか恥ずかしくなる。
だって梓くん、すっごく呆れ顔してるんだもん。


「ほんと抜けてるよね、名前って。」

「う、あ……え?」

「まぁそういうのもかわいいと思うけど。」

「え、えっ、え?」


ごめんなさい、梓くんの言葉が理解できません。
でも、してやったりって顔の梓くんはかっこよくて、やっぱり好きだなって思った。



キャパオーバー
(「うぅ、あ、そういえば授業は?」)
(「サボりだよ。」)
(「えぇっ?!」)



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