お前はなんでもできるよな。 さっすが名前、やっぱり名前は違うよね。
ずっと、ずっとそう言われ続けてきた。 元々意地っ張りな性格だったし、他人に努力なんてみせたくなかったから当然っていえば当然だったかもしれない。 でも、ほんとの私はそんな子じゃないんだよ。 どうして誰も気付いてくれないの?
どうして、夜久さんばっかり構うの? 苗字なら大丈夫、ってどうして。 同級生も先輩も後輩も先生もみんなみんなみんなみんな! 私だって守ってもらいたいよ。 それすら望んじゃいけないの? こんなときも、1人で切り抜けなきゃダメだっていうの?
「離してください。」
「おーおー、相変わらず気が強ぇなぁ!」
「聞こえませんか? 離してください、今すぐに。」
キッと強めに睨む。 相手は1人。 大丈夫、もし変なことしてきそうでもなんとかなる。 少しだけ臨戦体制。 あくまで相手を刺激しないように、小さめに。
「あんまり調子乗ってると、痛い目みるよ? 今の自分の状況を、そのよくできた頭でしっかり考えろよ。」
「……考えた結果がこれです、ほっといてください。」
「口で言ってもわかんねぇってことか。」
仕方ない、そう言った感じの雰囲気でいう男はスッと私に手を伸ばす。 よし、これで正当防衛。 そう思って殴ろうとしたときだった。
「はい、そこまで。」
「っ?!」
「な、お前は…!」
パシッていう効果音が聞こえそうな感じで、殴ろうとした私の手と私に伸ばした男の手を誰かに掴まれた。 びっくりしてそっちをみれば、確か夜久さんのナイトの、
「と、うづき……すず、や…?」
「あ、名前知っててくれたの?」
「だって……有名人、」
意外すぎる人物に驚きを隠せない。 東月は私ににこにこ笑いかけたあと、男に顔を向ける。 私から見えないけど、男の顔がみるみる青くなっていってるからさぞかし恐ろしい顔なんだろう。 見たくない。
「すっ、すみませんでしたああああああっ!」
「あ、逃げた。」
「逃がしたんでしょ、自分で離してたじゃんか、手。」
「ははっ、まぁあれだけ怯えてたらもう苗字さんにちょっかいかけようだなんて思わないだろうしね。」
爽やか、が1番しっくりくる笑顔を見せる東月。 うん、別に頼んじゃいない。 頼んじゃいないけど、結果助けられたわけなんだから。
「……ありがと。」
「どういたしまして。 これからもし何かあったら、危ないからちゃんと俺を呼んで?」
「え?」
思わぬ言葉に目を見開いて東月を見る。 今、なんて言った?
「苗字さん、自分が女の子なの知ってる?」
「知っ、てる、よ。」
「うん、だから俺に守られてなよ。」
ぽんと優しく頭に乗っかるぬくもり。 いきなりのことにびっくりしたけど、イヤじゃなくて。 自然と笑顔が浮かんでいた。
私を守る騎士 (「前から、苗字さんとは一度喋ってみたかったんだ。」) (「え、そうなの?」) (「うん、なんか同じ匂いがした。」) (「に、おい…?」) (「そういうかわいいことしないで。」) (「だ、だって匂いって言ったじゃん!」) (「いや、俺は雰囲気的な意味で言ったの。」) (「えっ、あ……そう、なの…。」)
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