遠距離だって、乗り越えれると思ってた。
電話もメールもあるんだし、私たちなら大丈夫、って。
でも、大丈夫なのは初めの数日。
そこからは日に日に会いたい気持ちが募って募って弾けそうで。
会いたいのに会えないもどかしさに、耐え切れなくなって泣いた日もあった。
「梓、梓、」
『どうしたの?』
「梓っ、あず、」
『……名前?』
電話しても、気を抜けば“会いたい”って言いそうで、でもそんなこと言えないからさっきみたいに名前をずっと呼びつづける。
会話すればいいのに、それすらできずに、いつも梓を困らせてばっか。
ごめんね、こんな聞き分けのない彼女で。
「っ、ごめん、梓、」
『大丈夫だから。
落ち着いて、ちゃんと聞いてるよ。』
ゆっくり落ち着かせるような梓の声に、深呼吸。
ちゃんと酸素を吸ってるのに、まだ息苦しい。
それに、胸もズキズキ痛む。
でも気付かないフリ。
これ以上、梓のお荷物になりたくない。
「大丈、夫…だよ、ごめんね。」
『ううん。
……ごめんね名前、愛してる。』
悲しそうな、愛しそうな声が鼓膜を揺らす。
どうして梓が謝るのか、聞きたかったけど、聞けなかった。
電話越しの愛してる
(近くて遠い、キョリ。)
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