大会で見かけた、キレイな弓の男の子。 まだまだ背は低いし声も高いけど、弓を引くときにちらりと見えた腕はしっかりとしていて。 きゅっと胸が甘く痺れたのを覚えてる。 それが、私が中1のときの話。
でもある時期を境に、その子……木ノ瀬くんはぱったり大会に出なくなって、噂ではやめたとか。 すごく、残念だった。 木ノ瀬くんは、私の目標だったのに。 急に虚しさが私を包んだ気がした。 それでもやめれなかったのは、例えのめり込んだきっかけが木ノ瀬くんだったとしても、弓道が私の中であまりにも大きかったからだと思う。 それと、弓道を失うと木ノ瀬くんとの繋がり(まぁ面識があったわけじゃないけど)が消えてしまうような気がしたから。
まぁ、とにかく。 なんでいきなりこんな話をしたかといえば。 そのままズルズルと弓道を続けていた私は、高校にあがった今も続けていて。 そして今日はインハイの予選。 もう会えないと思ってた目標が、いた。
久しぶりに見る木ノ瀬くんは相変わらず小さかったけど、相変わらず堂々としててかっこよくて。 どれだけの時間が経とうと、私を魅せた弓は再び感動をくれた。
「……あ、」
ジッと木ノ瀬くんを見ていると、かわいい女の人が木ノ瀬くんに話しかけた。 木ノ瀬くんも嬉しそうに答えていて。 それだけなのに、見てると何故か、心臓がじくじく痛みだす。
「やだ、なにこれ…。」
泣きそうになるのを必死に堪えてその場を去る。 この感情の意味を知るのは、もう少し先の話。
望まない結末 (ただの憧れだけでよかったのに。)
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