確か、初めて会ったのは中2の冬で場所は学校の図書室。 星座の本が並んでる辺りで、私は彼と会った。
「あ、」
「む、すまない。」
本に伸ばしたはずの手は誰かの手とぶつかる。 びっくりして相手を見れば、学年問わず絶大な人気を誇る宮地先輩で。 ルックスがよくて、しかも真面目な性格が女子からウケがいいんだよって友だちが言ってた気がする。
「あ……もしかしてその本、ですか…?」
「あぁ、お前もか?」
「え、あ、でも先輩がお先にどうぞ! 私は別の本からでも大丈夫なので!」
「待て。」
慌てて言葉を紡いでその場を去ろうとしたら、がっしりと腕を掴まれ逃走失敗。 怖ず怖ずと振り返れば、少しはにかんでいる宮地先輩がいて。
「お前から先に読めばいい。」
「で、でも…!」
「その本、読むということはお前も星が好きなんだろう?」
「え、えぇ、まぁ、」
「なら、問題ない。」
ぎこちなく頭を撫でる宮地先輩。 びっくりしすぎて思考停止したけど、宮地先輩の「じゃあな」っていう声にハッとする。
「あ、あの!」
「? なんだ?」
「その、えっと…!」
つい呼び止めてしまってから、話す内容を考えてないのを思い出す。 必死で今までの会話から妥当な話を考える、と。
「お、お前もって、先輩も、星がお好きなんですか…?」
「あぁ、好きだ。」
震える唇でやっと紡いだ言葉に、柔らかな笑顔で答える宮地先輩。 “星”が好きって言ってるのに、何故かどきどきと心臓が高鳴った。
「あ、あの、」
「む、なんだ?」
「その、またいつか……一緒に天体観測しませんか…?」
先輩の笑顔を見ていたらいつの間にか出ていた言葉にハッとする。 慌てて両手で口元を押さえるけど、出た言葉は戻らなくて泣きそうだ。 馴れ馴れしすぎるでしょ私、信じられない。
「や、あの、今のは、」
「あぁ、わかった。」
「……え?」
「俺も、お前と星が見たい。」
私の声を遮って、予想外の返事をくれた先輩。 目を見開いて宮地先輩を見れば、ほんのりと頬が色付いていて。 きっと私は宮地先輩より真っ赤なんだろうな、って他人事みたいに考えていた。
小さなきっかけ (「……あ、でも先輩受験が…。」) (「息抜きも必要だ。」)
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