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直獅先生は、すっごく熱血で、優しくて、おもしろくて、生徒思いで。
初めは“先生”として好きだったけど、いつしか“男の人”としてみるようになった。
そんな自分がイヤで、ツラくて、いつしか直獅先生を避けるようになっていた。


「お前、直獅が悩んでたぞ。」

「え?」

「最近お前が避けてるみたいだし授業も目を合わせてくれない、って。」


なんだか逃げ場化してしまった保健室で、星月先生にそんなことを言われた。
悩んでくれたのは申し訳ない反面、嬉しいと思ってしまう。
そのまま私だけを考えてくれたらいいのに、なんて。


「それと俺は今からちょっと出るが、」

「ん、じゃあお留守番しとく。」

「頼んだぞ。」


保健係ではないけど、こうして保健室で過ごしてるうちに、こんなことはたくさんあるようになった。
だから今日もそうなんだろうと、高を括っていたんだけど。


「おー……い…?」

「な、直獅、先生?」


しばらくして勢いよく開いたドアに、ケガした生徒かと思って見れば、なんと直獅先生で。
保健室の出口は1つ、その1つは直獅先生がいて使えない、つまり。


「ハメられた…!」


ちくしょう、やりやがったな職務怠慢野郎。
なんて心の中で悪態をつく。

そんなことをしていると直獅がドアを閉めてこっちにくる。
ご丁寧に鍵まで閉めて。


「直獅先生?」

「久しぶりに、苗字とゆっくり話せるな。」


にっこり、笑ったお顔が怖いです先生。
鍵まで閉められたら開ける前に捕まるし、もう終わりだ。


「じゃあとりあえずなんで避けてたのか、理由を教えてもらおうか。」


そう言った直獅先生が、私の言葉を聞いて顔を真っ赤に染めるまであと何秒?



窮鼠、猫を噛む
(「直獅先生、顔真っ赤だよ。」)
(「ううううるせぇ!」)




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