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「あ、颯斗くん。」


廊下にて。
歩いていると、名前さんに声をかけられ振り向けば。


「……鬼、ですか。」

「鬼だよー。」

「それに豆、ですね。」

「お豆だよー。」


鬼のお面をつけ、豆入りの升を持った名前さん。
これは、どうつっこめばいいんでしょうか。


「とりあえず、次の授業はどうするんですか?」

「サボり!」

「そのお面と豆をこちらに渡してください。」


いい笑顔でそんなことをいう名前さんから、お面と豆ふんだくる。
自分が進級の危機に瀕しているのを理解しているのでしょうか。


「これは没収です。」

「ケチ!」

「ケチじゃありません。
授業をサボろうとするあなたが悪いのですよ。」


ぶーぶー文句を言う名前さんににっこり笑う。
すると黙った名前さんに嫌な予感しかしません。


「名前さん?」

「あのさ、あのさ!
授業終わったら生徒会のみんなで豆まきしよ!」

「……はぁ、僕たちは仕事が、」

「ね、いいよね!」


きらきらした目は、僕の意見を聞くつもりはないらしく。
そんな彼女を、僕はついつい甘やかしてしまう。


「……仕方ありません、ね。」

「ほんと?!」

「えぇ、ですから授業はちゃんと受けてくださいね。」

「やったー!」


きゃっきゃと喜ぶ名前さんは、どうやら僕の話は聞いてないみたいで。
僕はそれにため息をつきながらも、楽しみにしているからか口角があがるのを感じた。



惚れた弱み
(「会長!」)
(「ぅおっ?!」)
(「会長は鬼です!」)
(「ぬは、豆まきか?」)
(「翼くん!」)
(「俺もやるのだー!」)
(「いいよっ!」)
(「いたっ!お前ら手加減というものを、」)
(「……はぁ、月子さんは危ないのでこの辺から参加してくださいね。」)
(「うん、ありがと……それとお疲れさま。」)
(「いえ、」)



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ギリギリセーフ!

翼くんの誕生日にばかり気がいってた…!



2012.02.03 節分




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