「……あ、」
前方、約50メートル先に愛しの翼くんの後ろ姿を見付けた。 私は、ニッと口角が上がるのを隠さず、タッと駆け出す。
「つーばさくーんっ!」
「ぬはっ!」
タックルみたいに全身でぶつかれば、前のめりになる。 あ、ヤバいかな、って思った次の瞬間はもう翼くんごと倒れていた。
「いたた、」
「危ないのだ、名前!」
「えへ、ごめん。」
怒って、ていうよりも寧ろ心配して、っていう風な声。 確かに反省はしてるけど心配してくれてるのが伝わって、すごく嬉しい。
「聞いてるのか?」
「うん、聞いてる!」
にっこり笑いながら言ったからか、ため息をつかれた。 ちょっと、梓くんとキャラかぶってる!
「じゃなくて!」
「ぬ?」
「あ、あのね!」
がさごそ。 かばんの中を探れば、首を傾げる翼くん。 かわいいなちくしょう!
「あ、あった!」
「ぬ?ぬ?」
「これ、あげる?」
「なんだ、コレ?」
キレイにラッピングしてもらった袋を渡せば、また首を傾げる。 だからそれかわいすぎるから! おっきい体でそのかわいさはもう反則!
「あ、開けていいよ!」
「うぬ!」
少し俯きながら言えば、がさごそと袋の音。 それから無言。 ……って、無言?
「……あ、あの…?」
恐る恐る顔を上げれば、私があげたプレゼントを見て固まってる翼くん。 ヤバい、ミスった…?
「ご、ごめん! 気に入らなかった?!」
「ぬ、そんなことない! すごく嬉しいぞ!」
私の声に、にぱっと笑う翼くん。 どうやら外してはないらしい。 よかった、気に入らなかったんじゃないかって本気で焦ったよ……。
「なぁなぁ、さっそく使っていいか?」
「あ、うん! ……あ、やっぱりちょっと貸して!」
きらきらした顔で付け替えようとする翼くんからプレゼントを貸してもらう。 ちなみにそのプレゼントというのは、新しい髪留めのピン。 今つけてるのは爆発やらなんやらで少しハゲてたりするし、何より翼くんのそばにおいておけるのはピンかなぁ、って。
「ちょっと外すね。」
「うぬ。」
そっと付けてたピンを外す。 上げていた前髪が落ちてきて、少し大人っぽい。 それがなんだかすごくどきどきして。
「名前?」
「え……あ、ご、ごめんね!」
思わず見とれてたら、不思議そうな顔の翼くんが私の顔を覗いてて、慌ててさっきの続きをした。 サッともう一度髪をあげて、プレゼントのピンで留める。 それから、翼くんのほっぺたに両手を添えて、顔を近付けて。
「お誕生日、おめでとう翼くん。」
生まれてきてくれてありがとう、私と出会ってくれてありがとう。 いろんなありがとうを込めて。 ちゅっと、無防備なおでこに軽くキスをした。
「、名前。」
「なに……っ!」
しばらくポケッとしていた翼くんだけど、いつもと違う大人びた笑顔を見せたあと、視界いっぱいに翼くんがいて。 唇になんか柔らかい感触がして、して……。
「……っ!」
「ぬは、真っ赤だぞ。」
キスされた、って気付いた瞬間、逃げ出そうとしたのに腕を捕まれて失敗に終わった。 ぎゅうっと抱きしめられたら、いつもは嬉しいはずなのに、今は恥ずかしいが先行してしまう。
結局、梓くんに見付けてもらうまで、私は翼くんにされるがままだった。
想いを込めて (「……あれ、それプレゼント?」) (「ぬは、さすが梓だな!その通りなのだ!」) (「へーぇ、名前にしてはセンスいいね。」) (「なっ、失礼!」)
―――――――― 翼くん、おめでとー! 今度、きっとちゃんとした(?)長編か中編書くから! なんか梓くん贔屓だったもんね、うん。 ネタさえあったら書く、よ!……たぶん。
2012.02.03 翼誕
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