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バレンタイン。
ほんとは浮かれるはずのイベントなのに、俺はこの日がくるのがイヤで仕方なかった。


「颯斗くん!」

「どうしました?」


目の前で颯斗に笑顔で話しかける名前は、きっと颯斗のことが好きなんだと思う。
それで、きっとバレンタインに告るんだろう。
ズキズキと胸が痛んだ。

バレンタインなんか、来なけりゃいいのに。
そんな俺の願いを聞き入れるヤツなんていないまま月日は無情にも過ぎていき、今日がバレンタイン当日。

そわそわしている名前を見たくなくて、屋上庭園に行く。
こんだけ寒けりゃ人もいなくて、仕事の時間までしばらくここにいとこうと心に決めた。
それにしても寒ぃな。
毛布持ってきて正解だった。


「……あっ、一樹会長発見!」

「あ?」


持ってきた毛布に包まって、寝ようとした瞬間。
ドアの方からそんな声が聞こえてきた。
振り向いて確認すればそれは名前で。


「探しましたよー」

「なんでだよ。
颯斗はどうした?」

「颯斗くんですか?
たぶん、今日のイベントの最終チェックに追われてますよ?」


しゃがみ込みながら言う名前にフイッと視線をそらす。
こいつ、自分が短いスカートはいてる自覚ないだろ。


「あのですね。」

「……なんだ。」

「これを、受け取っていただきたいのですが。」


煩悩を追い払いながら言えば、遠慮がちに何かを差し出す名前。
俺は起き上がってそれを受け取ると、毛布と俺の間に名前をいれる。
見てて寒そうだし、何より目のやり場に困るからな。
今日くらい、颯斗も許してくれるだろう。


「あ、あったかい…。」

「そりゃ俺があっためたからな。」

「……月子ちゃんに申し訳ないですね。」

「あ?月子?」


いきなり出てきた名前に首を傾げれば、名前は少し悲しそうに「一樹会長は、月子ちゃんが好きなんでしょう?」なんて言いやがる。
何言ってんだ、こいつ。


「確かに月子のことは好きだが、あくまで後輩とか娘としてだぞ?」

「え?」

「第一、俺には好きなヤツが別にいる……って何を言わすんだ!」


危うく口を滑らせるとこだった。
でもそこは名前も女子。
こういう話には異常に興味を示すし、誰だ誰だって聞いてくる。
言えるわけなんかないから、逆に「お前は誰が好きなんだよ」って言ってしまった。


「わ、たし…?」

「……颯斗だろ?」

「え?颯斗くん?」


ヤケになって言えば、今度は名前がぽかんとしている。
は?違うのか?


「私も、颯斗くん好きですけど一樹会長の言ってるような意味とは違いますよ。」

「そう、なのか…?」

「はい。
私の好きな人は鋭そうに見えて、とっても鈍いんです。
せっかくチョコ渡したのに、私の気持ちに気付いてくれないんですよ?」


ヒドいですよね、なんて笑う名前。
チョコを、渡した…?
バッとさっきもらったものを開けてみれば、それはキレイなチョコで。


「っ、好きだ…!」

「ふふ、私も一樹会長が好きです。」


思わず後ろから抱きしめていえば、嬉しそうに笑う名前。
今まで颯斗に遠慮してた自分がバカらしくて、手に入れたぬくもりが優しくて、俺も笑っていた。



初めから両想い
(「私たち、なんだかバカみたいですね。」)
(「まぁな……でもまぁ終わり良ければ全て良し、だろ。」)




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優希さまに捧げます。


とにかく駆け足で申し訳ないです…!
うまくシチュを活かせなくてすみません!
もし気に食わないようなら返品、書き直し受け付けてますので!


優希さまのみお持ち帰りください。

バレンタイン企画へのご参加、ありがとうございます!




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