一樹会長の卒業が近付いてきて、なんだか寂しくなったのかもしれない。 今日は生徒会は休み、だけど私は今日も生徒会室にきていた。
無意識に私は会長のイスの前に立っていて、ジッとそれを眺めた。 今まで、一樹会長はここに座って何を考えたんだろう。
「何してんだ、名前?」
「!」
「なんかあるのか?」
ぼーっとしていた私に、いきなり声をかけてきたのは一樹会長で。 少し感傷に浸ってたからか、何故だか無性に泣きたくなった。
「何もねぇじゃ……ってどうしたんだ?!」
「っ、かいちょ…!」
傍まできた一樹会長は、泣きそうな私をみて慌てた。 でも私の涙はもうこぼれかけていて。
「泣くなって…!」
そう聞こえたと思えば、目の前が会長の制服でいっぱいになって。 抱きしめられてるんだ、って理解したときにはすでに、私は一樹会長に縋り付くように泣いてた。
「……どうしたんだよ、一体…。」
「うぅっ、会長なん、てまた留年すれば、いいのに…!」
「おまっ、無茶苦茶言うな、って。」
そう言って呆れたように笑いながら、優しく頭を撫でてくれる。 あったかいその手が心地好くて。
いつから、この人を男の人として見るようになったんだっけ。 一樹会長とこうしてる理由が、泣く私を慰めるためじゃないのだったらよかったのに。
そんなことを考えながら会長のぬくもりに抱かれて、そっと目を閉じた。
すれ違う (「(……柔らかいな、って俺は何を…!)」) (「(会長の腕の中、最後の思い出だなぁ…。)」)
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