「やっほー!」
「……は?」
ものすごい勢いで開いたドア。 そのとき一緒に聞こえた見知った声に思わず固まった。
「ぬぬ、すごい格好なのだ!」
「この子かわいー! ふふ、坊や何歳なの?」
「坊やじゃない!」
「あら、怒っちゃった? もうかわいーわねぇ!」
「あ、あの…?」
「ああ月子ちゃんごめんね、ありがとう!」
「い、いえ……。」
いきなり翼に突っ掛かるこいつに、ため息をつく暇もなくフリーダムな会話が繰り広げられる。 後ろからひょっこり月子が出てきたってことは、月子が案内したのか? ていうかそれ以前に、なんでこいつがここにいるんだ!
「名前、お前どうやってここに…!」
「電車とバスを乗り継いで歩きできたのよ。」
「そこじゃねぇ!」
「え、会長のお知り合いですか?」
「んふ、一樹ってば会長なんてやってるの?」
「うるさい! おい颯斗、茶なんか出さなくていいぞ!」
「ですが、会長のお知り合いでしょう?」
「そうよそうよ!」
「お前はややこしくなるからしゃべるな! あ、じゃあ月子、お前が茶をいれろ!」
「わ、私ですか?!」
いきなりの名指しに驚く月子だけど、すぐに茶の準備に行った。 こいつに颯斗の茶なんかもったいなさすぎる。 そんな俺の思惑を知らない名前は嬉しそうに翼の頭を撫でていた。 というか翼がすっごい懐いてる、っつーか懐きすぎだろこれは。
「お待たせしました!」
「あら、ありがとう。」
「いえっ、お口に合うかどうか……。」
いつものみんなの反応を知ってるからか、不安そうな顔をする月子。 名前はその茶を一気飲みして一言。
「あら、美味しい!」
「え?」
「ほ、ほんとですか?! やった、やりましたよ会長!」
「もう一杯いただけるかしら?」
「はい!」
にこにこしながらまた茶をいれに行った月子を尻目に、名前に向き直る。 颯斗も翼も同じ気持ちらしく、名前を見ていた。
「ふふ、美少女の淹れるお茶はなんでも美味しいのよ?」
「つ、強者なのだ…!」
「尊敬に値しますね。」
「そう、だな。」
呆然とする俺たちを知ってか知らずか、月子がお茶を持ってきた。 なんか、無駄に疲れた気がする。
襲来 (「ところで会長、この方は?」) (「……俺の姉さん。」) (「愚弟がお世話になってますー。」) (「ぬいぬい姉はパワフルなんだな!」) (「ふふ、ありがと。」) (「もう頼むから黙って帰ってくれ。」)
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