宇宙科の木ノ瀬くん。 何故か彼は私を見付けてはアメとムチを上手に使い、私で遊ぶ。 そう、私“で”遊ぶ。
「あ、苗字。」
「わっ、木ノ瀬、くん……こんにちは。」
噂をすればなんとやら。 あんまり会いたくないのになぁ。
「なに、移動教室?」
「そう、だけど。」
「1人で?寂しい子なんだね、可哀相に。」
「うっ、ち、違うもん、友だちがちょっと用事あって一緒にいけなくなっただけだもんっ」
「苗字と一緒に行きたくなかったんでしょ? それも気付けないなんてほんと残念な頭だね。」
ハッ、と鼻で笑う木ノ瀬くんに涙目。 そんなに、言わなくてもいいじゃない。 そう思うのに言ったら泣きそうだから言わない。
「ほら、行くよ。」
「え…?」
「アホ面。 移動教室なんでしょ?」
「そう、だけど…。」
「ならボサッとしないで行くよ、って。」
いきなりのことで動けない私の手を引いて歩きだす木ノ瀬くん。 意味がさっぱりわからない。
「あのね、苗字も一応女なんだよ?」
「え、っと……ケンカ売ってる…?」
「お前が売ってるんだろうが、買うぞ。」
「す、すみません…!」
前、犬飼先輩に言われた通りにしただけなのに! 言葉だけじゃなくて、繋いだ手もぎゅっと力を入れられて痛い。
「とにかく、こんな男子校同然の学園なんだから女1人でぼけーっとうろうろするな。」
「え、え?」
「返事は?」
「いたっいたたたたっ、すみません、わかりました、ごめんなさい!」
「わかればいい。」
そう言う木ノ瀬くんが急に立ち止まり、不思議に思って木ノ瀬くんを見上げると頭を撫でられた。 こうして木ノ瀬くんに頭を撫でられるのが好き。 目を瞑ってされるがままになってると、上からため息が聞こえた。 みんな低い低いって言うけど、木ノ瀬くんって結構背が高いんだよね。
「ついたよ、教室。」
「え、あ、ほんとだ!」
「じゃ、僕戻るから。」
「あ、ありがとう…!」
「ん、帰りは誰かと帰りなよ?」
そう言って去っていく木ノ瀬くん。 もしかして、送ってくれたの?
意地悪な優しさ (「はぁ……僕も甘くなったよねぇ。」) (「ぬ、またあのちびっこいののところに行ってたのか?」) (「ん、まぁね。」)
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