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「お前、さっき何お願いしたんだ?」

「んー?」


初詣。
哉太と一緒にお参りした後、手なんか繋いじゃった帰り道で思い出したかのように話す哉太。
きっと、私がやたら長い間拝んでたからなんだろうけど。


「秘密ー」

「なんでだよ。」

「女の子には秘密がいっぱいなんだよ?」


そう言えば、ため息をつかれた。
仮にも彼女に対して失礼じゃないか?


「なんでもいいから教えろよ、気になるだろ?」

「わわっ……でも、言ったら効果ないんだって。
だから言えない、ごめんね?」


頭をぐしゃぐしゃ撫でる哉太にそう言えば、何か感づいたのか、その手をとめて、繋いでた手をぎゅっと握る。
そのまま前を向いたまま何も言わずに1歩前を歩く哉太に、余計なことをしたかなぁって後悔。
誰よりも繊細で、傷付きやすいのを知ってたのに……バカだなぁ、自分。


「名前、さ。」

「な、なに?」


自分の失態に、俯きながら引っ張られるように歩いてると、不意に哉太に声をかけられた。
普段“お前”って呼ぶ哉太が、“名前”って呼ぶときは本気の証拠。
知らず知らずに背筋が伸びた。


「俺は、確かに万能な体じゃねぇし、欠陥品だけど、名前が思ってるほど弱くはないつもりだ。」

「……うん、」

「だから、変な心配せずに傍で笑っててくれ。」


そう言って振り返った哉太の顔は、すごくかっこよくて、病気に真っ正面から闘ってる力強い笑顔だった。



いつまでも隣で
(「ふふ、かっこいい彼氏を持って幸せ。」)
(「なっ、ばっ、バカだろお前!」)



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2012.01.01 元旦




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