「幸せって、なんなんだろうね。」
そう呟いた名前は、もうベッドから起き上がってくる気力もないらしい。 細くなった体が痛々しくて、消え入りそうな声は儚くて。
「庇わなかったらよかった。」
「名前、」
「あんなヤツに、人生を棒に振るなんて…!」
悔しそうな声に、自分の顔が歪んだのがわかる。 名前は、付き合ってた男の事故をかわりに受けて挙げ句捨てられた。 まぁ高校生の俺らからしたら、捨てる、なんて変な言い方だけど、とにかくヒドい振り方だった。 恩を仇で返す、を具体的に表したような雰囲気で名前を貶し、今はもう別の女を作って遊んでる。 さすがの俺でもキレそうになったけど、名前がとめるからやめた。 会長が私の為に手を煩わすことはない、って言って。
だから、俺が今できることは名前の愚痴を聞いてやること。 それから名前の傍にいること。
「例え名前の足が動かなくても、俺が名前のかわりに歩いてやるよ。」
「会長、」
「名前が連れてってほしいとこ、いくらでも連れてってやる。」
そう言って笑えば、名前も笑い返してくれる。 それが、ヒドく嬉しかった。
支えたい存在 (「初めから、会長を好きになればよかった。」) (「……今からでも遅くねぇよ、俺にしとけ。」)
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