「ねぇ、梓はもう課題終わったの?」
「そりゃね。 名前はまだなの?」
隣にいる彼氏に尋ねてみれば、至極当たり前といった風に言われてしまった。 なんだろう、梓に言われると自分が間違ってるような気さえしてくる。
「いや、冬休み始まったばっかじゃん。」
「冬休みは短いよ?」
「うっ……わかってるけど、」
「けど?」
ニヤリ、と意地の悪い顔の梓にいたたまれなくなる。 畜生、なんかすごく負けた気分だ。
「……難しい、し。」
「やっぱりね。」
意を決して紡いだ言葉は思った以上に弱々しい。 それのどこがおもしろいのか、くすくす笑う梓。 まぁきっと、私の次の一手も読んでるからこその笑いなんだろうけど。
「……手伝ってくれませんか?」
「お礼はキス?」
「もういい、翼に頼むから!」
恥を忍んで言ったのに、自分の唇に人差し指を押し当て妖艶に笑い、そんなことをのたまった梓にそう叫んだ。 そうだよ、梓なんかより翼の方が成績的には賢いんだよ! ただ、教えるって点では少し不安な点が多々あるけど。
「ウソウソ、キスは勝手にするから大丈夫。」
「大丈夫じゃないよ、それ!」
「いーのいーの。 ほら、こんなの早く終わらせて2人でゆっくりしよ?」
……確信犯か。 そう思わずにはいられなかったけど、赤い頬を隠しながらそれでもいいと思う自分もいた。
確信犯 (「あ、終わった…!」) (「うん、キスしてあげよっか?」) (「そればっかだね。」) (「うん、キスしてあげよっか?」) (「………。」)
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