「琥太郎先生、」
「………。」
眠る琥太郎先生に近付いた。
綺麗な顔立ちの先生は、寝てるせいか少し幼くてかわいい。
そっと頬に触れると、女顔負けのすべすべな肌。
「先生、ほんとに寝てるんですか?」
「………。」
返事がない。
いつも、なんだかんだ近付くと起きるのに……疲れてるのかな?
職務怠慢のくせに。
「………。」
「………。」
ジッと先生を見つめる。
ほんとはちゃんと仕事がんばってるの、知ってるよ。
だって、そんな先生が、
「……好き、だよ。」
「………。」
静かな保健室に、私の声が響く。
けど、返事なんて返ってこない。
なんだか恥ずかしくなって、「なんてね、」って呟いて保健室を出た。
「……俺も、好きだ。」
だから聞こえなかった。
琥太郎先生が返事してくれたなんて。
この大きなチャンスを逃した私に、春は一生こなかった。
逃がした魚は大きい
(一生、悔やんでも悔やみきれない。)
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