「誉先輩、誉先輩。」
「何かな?」
「好きです、」
「え?」
「先輩の淹れるお茶。」
「あ、あぁ、そっち?」
生徒会室にある茶室で、誉先輩が淹れたお茶を飲みながらほっこり和む。 茶道の家元だからか、誉先輩のお茶はすごくおいしくて飲みやすい。 そのことを言ったのに、誉先輩は複雑そうな顔をする。
「誉先輩?」
「うーん、できればお茶じゃなくて僕のこと好きになってくれたら嬉しいんだけどね。」
「誉先輩も好きですよ。 尊敬できる、いい先輩です。」
「……うーん、まぁちょっと違うんだけど、いっか…ありがとう。」
苦笑いをこぼす先輩に私は首を傾げる。 一体、何を言いたいんだろうか。 でも、こうなった先輩はどんなにがんばっても答えを自分で見付けない限り、いつもはぐらかすからなぁ。
「先輩、言わなきゃわかんないです。」
「うん、でも言ったら苗字さん困っちゃうから言わないでおくよ。」
「言わなきゃ、困るか困らないかわかんないじゃないですか。」
ムスッと拗ねてみても、やっぱり言ってくれなくて。 でも、「ごめんね」っていいながら頭を撫でられたら、うまく先輩に丸め込まれてしまう。 心のどこかで、まだ気付きたくないのかも、なんてね。
あと1歩届かない (「先輩は、ズルいですよね。」) (「そうかな?」) (「はい。」)
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