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あれは俺がまだ中学の頃だった。


「……あの、」


急に声をかけられ振り向けば、言ってはアレだが少し地味な女子。
知り合いでは、ない。


「あの、今日、なるべく道路、とか、行かない方が、いいです……よ?」

「えっと?」

「あ、えと、いきなり、すみません……でも、あなた、今日、事故に、あうから…その、」


一生懸命言ってるのは伝わるけど、正直な話「なんだこの子?」って方が強い。
精神病持ち、なのか?


「忠告、ありがとう。」

「あ、いえっ…!
じゃあ、私はこれで、」


俺がそう言えば、慌てた感じにそそくさと言ってしまった。
それから俺はそのことを頭の隅に追いやる。
気にしなくてもいいだろう、それが俺の見解だったから。


それから用事を済ませ、帰宅する途中。
ふとさっきの女子の言葉が蘇った。
今、道路のわきにいるからか、少し気にかかったんだと思う。


「っ、危ない!」

「えっ…?」


ぼんやり考えながら歩いていたせいか、そんな声と車の音に反応が遅れてしまった。
必死そうなさっきの女子の顔、突き飛ばされた感覚、反転する世界、それから鮮やか過ぎる赤。

何が、起こった?


「っ、おい…!」


少ししてハッとした俺は慌てて倒れた女子に近寄る。
息はある、焦る俺はそれに少し安心した。
といっても彼女から流れる血は止まることをしらない。


「っげほ、」

「意識が…!」

「はは、だから、道路に近付いちゃ、っごほ!」

「喋るな!」


力無く笑う彼女を怒鳴りつけると、申し訳なさそうに黙った。
冗談じゃない、申し訳ないのは俺の方だ。


「絶対、死なせたりしない!」


そう言った俺は慌てて救急車を呼んで、止血やらとりあえず自分にできることをした。
程なくして到着した救急車に乗せられ、彼女は一命を取り留めたんだ。


「あの時は、ほんとに冷や汗かいたよ。」

「錫也が私の忠告無視するからでしょ?」

「そうだな、でも見ず知らずの奴に“事故るから道路に近付くな”なんて言われて、信じれるわけないだろ?」

「ひどーい!」


そう言って頬を膨らませる名前はあのときの命の恩人。

あの事故の傷痕はまだ彼女に刻まれているが、名前いわくそれは“未来を変えた代償”らしく、察しの通り彼女は星詠みの力を持っている。
その力を俺のために使ってくれた彼女は、この傷が誇りらしく、気にしてないけど俺はすごく申し訳なくて。

だから、これからは俺が名前を守るんだ。
俺に星詠みの力はないけど、こいつを精一杯幸せにしてやりたい。



救われた命を君に
(俺は一生、お前に尽くそう。)




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