私の大好きな彼氏は、横暴で俺様だけど、何よりも私を愛してくれたし、その愛を伝えてくれた。 でも普段は恥ずかしくてちゃんと返せないから、今日はがんばって伝えようと思ったのが、朝7時ごろ。
「よ、」
「おはよ、いつもありがとう。」
「いや、気にすんな。」
いつも迎えにきてくれる一樹に、とりあえず感謝の気持ちを告げる。 よし、ここまでは順調。 案外さらっと言えるかも知れない。
「ねぇ、」
「ん?」
「その、す、」
言え、言うんだ、私。 そう思うのに、言葉はうまく形作ってくれない。 「す?」って不思議そうな一樹に、必死になった結果、
「涼しいね、今日も。あはは、」
「あ? 今日は寒いだろ。」
「そ、そっか、そうとも言う……。」
いや、さすがに私もないと思ったよ。 だからそんな可哀相な目で見ないで。
よし、次のチャンスはお昼休みだ。 今度こそ、言おう。
「おーい、飯食いに行こうぜ。」
「あ、今日お弁当作ったの……一樹の分も。」
「まじか? じゃ、せっかくだし屋上庭園行くか?」
「う、うん。」
屋上庭園か、あそこなら教室よりは言いやすいかも。 とか、考えた私が甘かった。
「くひひっ、こんなところで会えるなんて。」
「……白銀先輩。」
「ごめんね、僕たち帰るから。」
「えー、帰るのぉ?」
「ほら、行くよ桜士郎。 ごめんね、じゃ」
「いててもいいぞ?」
「ほら、一樹もこう言ってるんだしー、ね、いいよね?」
「でも、」
「あ、一樹がいいって言うんですし、いいですよ別に。」
あぁ私のバカ。 金久保先輩はほんとに申し訳なさそうにしながらまた腰をおろす。 まぁ、放課後があるんだし。 とか思いながら、少し、イヤな予感がした。
その予感が的中したのを知るのは、今日の授業が全部終わったとき。 一樹が私の教室にきたときだった。
「悪い、生徒会が入ったんだ。」
「あ、そう。」
あーやだやだ、イヤな予感ほど当たるんだから。 でも今、目の前で手を合わせ頭を下げる一樹は悪くない。 ……別に、悲しくもないし。
「また、埋め合わせするから。」
「いいよ、生徒会の仕事なら仕方ないし。」
「でもな、」
「いいの!」
一樹は悪くない。 わかってても、今日中に言いたくて、でも言えなかったことが悔しくて、思わずおっきい声を出した。
「あ、いや……ごめん、おっきい声出して。」
「いや俺こそ、ごめん、な。」
そう言って私の頭を撫でる一樹。 今なら、言えるかも。
「あのね、一樹。」
「なんだ?」
「私、一樹のこと、す、好きだよ、」
「え…?」
「じゃ、生徒会がんばってね。」
ぽかん、と驚いた顔の一樹にクスリと笑って、教室を後にする。 よし、言えたよ、私。
「い、今のは……反則、だろ。」
教室に残された一樹が真っ赤な顔を片手で覆い、反対の手を腰に当てながらそんなことを呟いてたなんて。 1人言えたことに浮かれた私は知らなかった。
伝えたいこと (君への精一杯の愛を。)
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