[]




「……なにしてんの?」

「おー、名前。」


ベッドに寝転び、ひらひらと手を振りながら笑う一樹が、無性に腹立つ。
いや、ほんとは一樹にじゃなくて私に、だけど。


「アンタ、バカでしょ、ほんとに。」

「そうか?」

「そうだよ、私なんか守ってこんなケガして。」


ぽろぽろと目からこぼれる涙をぐいっと服の裾で拭う。
もうわかってると思うけど、一樹は私がケガするはずだった事故を防いでケガをした。
ほんとなら私がこうなるはずだったのに。


「泣くなよ、これくらい大したことねぇよ。」

「たっ大したこと、ないなら、病院になんか運ばれないわよ…!」

「いや、まぁ……そうかも、な。」

「バカでしょ、信じらんないっ!」


決壊した涙腺に、言葉を紡ぐのも必死になる。
一樹はそんな私の頭を優しく撫でて、何故か困ったように笑ってた。


「俺、お前のかわりにケガするのが当たり前だと思ってたんだ。」

「なっ、」

「聞けって。
俺は俺がケガすることでお前を守れたって気がして、な。
でも、大ケガして、お前が泣いてるのみて……俺がしてきたことが、ほんとに正しいのか、わからなくなった。」


悲しそうな一樹に何も言えなくて、涙で濡れてない方の手で、ぎゅっとカタく握られた一樹の手に触れる。
そんな顔、一樹らしくないよ、って言いたいけど言葉がでない。


「でも、お前がケガするのを知っていて、放っておけるほど俺は強くないんだ。」

「かず、」

「だから、」


私の手を引いて、ぎゅっと抱きしめる一樹。
場違いだけど、ちゃんと動いてる一樹の心臓に、ホッとした。


「俺は、死なないから。
お前が生きてるうちは、絶対に死んでやらないから……嬉しいとき以外、泣かないでくれ。
笑ってくれなきゃ、体張ってる俺の立場がないだろ?」


ぽんぽん、私をあやすように撫でる一樹に、私は何も言わず擦り寄った。
泣かないけど、あんまりムリはしてほしくない。
そう思う私はわがままなんだろうか?



この誓いを君に
(「今の、」)
(「ん?」)
(「少し、プロポーズみたいだったよ。」)
(「あー……。」)
(「なによ。」)
(「なんか今頃恥ずかしくなってきた……。」)
(「バカでしょ。」)




- 1 -
*PREVNEXT#