蝉の声を聞きながら、蒸し暑い廊下を歩く。 去年はイヤがってた夏期講習だが、なぜか今年は大好評でウチのクラスのやつらみんな参加することになって。 8月に入った今はまさに夏真っ盛り、あいつらも遊びたいだろうに来年受験なのを気にしてるのだろうか。 そう思うものの、それにしては一部のやつはサボるわ寝るわで何しにきたかわからない。
まぁ、それは置いといて、だ。
もうすぐ教室に着く。 と、いうことは夏休みとはいえいつものやりとりが変わることはなくで。 まぁ弁当のかわりにアイスをかけているんだが、ぶっちゃけ全員分のアイスを奢るとなればお財布に大ダメージなためいつも以上に真剣になる。 ごくり、と唾を飲み込む。 辿り着いた教室は、なぜかしんと静まり返っていた。
……いざっ!
「お前ら! 今から講習を始っ」
パンッ パンッ パパンッ!
『陽日先生、お誕生日おめでとーっ!』
「………え?」
勢いよくドアを開けば、大きな音と火薬の匂いと重なった生徒たちの声。 目をぱちくりしながら見渡せば、いつもの5人や夜久や東月や七海、その他の生徒たち。それからその一歩前で、立場上公にはできない俺の彼女である名前が笑顔で立っていて。
「ふはっ、陽日先生間抜けヅラー!」
「ちょっ、名前ちゃん!」
「くくっ、でも確かにそうだろ?」
「哉太…。」
俺を指差して笑う名前と七海を夜久と東月が注意しているのを、他人事のように見ていた。 状況にまだ追いつかない頭がぼーっとする。
「あれ、陽日先生?」
「……あ、あぁ…なんだ?」
「どしたの?」
未だに惚けてていたのに気付いた名前が、目の前で手を振って声をかける。 それがきっかけになったのか、じわじわと喜びが込み上げてきて。
「っ、お前ら…!」
思わず目の前の名前を抱きしめ、みんなに聞こえるように叫ぶ。 目の奥がジンと熱くなって、目尻に涙が浮かぶ。
「嬉しいこと、しやがって…っ」
ぎゅうっと名前を抱きしめる力が強くなる。 少し慌てたように名前が暴れたけど、今は何も考えられなくて。
「……あれ、セクハラじゃねーのか?」
「まぁまぁ哉太、今日くらいは多めに見といてやれよ。」
「ふふっ、陽日先生嬉しそうだね!」
「あぁ、そうだな。」
そんな幼馴染み3人のやりとりを聞き流しながら、我に返るまでずっと名前を抱きしめていた。
おめでとう、ありがとう (「(……後で、2人でお祝いするからね。)」) (「(! ありがとな…!)」)
*陽日先生おめでとー! 口調とか話の書き方とかめっちゃ忘れてる…! このあと講習ちゃんとできたんかな…とかいろいろ無茶設定でしたけどっ! おめでとうございますっ!
2012.08.11 直獅誕
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