「珍しいよな、お前から泊まりたいなんて言うの。」
そう言って笑う錫也に、思わず顔が熱くなる。 錫也はこうして私が恥ずかしがるのわかっててやるからほんとタチが悪い。 でも、変なとこ鈍感だからきっと私がこんなこと言い出した理由なんて気付いてないんだろうな。
「名前?」
「…なに?」
「麦茶、飲む?」
「あ、うん、もらう。」
私が答えるとわかったって笑いながら冷たい麦茶を差し出してくれる錫也。 いただきます、って小さく呟いてそれを喉に通せばじめじめした鬱陶しい湿気も少しはおさまった気がした。 それから当たり前のようにスッと隣に座った錫也を見上げる。 その瞬間に綺麗な青い目が私を捉えて、また優しく微笑まれた。
「どうした? そんな物欲しそうな目して?」
「なっ、してない!」
いきなり何を言い出すんだと怒れば、悪い悪いなんて軽く謝る錫也。 仕方なくふぅっと息を吐きながらそっと時計を見れば、そろそろ針が天井を指しそうな頃合いで。 ことん、とまだ麦茶の入ったコップを机の上に置く。 それから錫也の方に体を向ければ、意味がわかってないのか不思議そうな顔をする錫也がいた。
「? 名前?」
「あ、あのね、錫也……」
どくどくと心臓が痛いくらいに鳴って、堪えるようにぎゅっとズボンを握りしめて俯く。 それから意を決して顔を上げれば、きょとんとした顔の錫也、その唇に自分のを重ねた。
「ハッピーバースディ、錫也。」
恥ずかしくて照れ笑いみたいになったけど、そう言えば放心状態の錫也の顔が少しずつ赤くなる。 それになんだか優越感。 少し大胆すぎたかもしれないけど、たまにはこういうこともいいかな、なんて。
0時ちょうどに (「……いい、度胸だね?」) (「あれっ? 錫也さん…?」) (「俺は悪くないから、ね?」) (「えっ、ちょっ…!」)
*錫也くん、おめでとー!
間に合ってよかった…! その一言につきますね。 はぴばですっ!
2012.07.01 錫也誕
- 1 - *PREV|NEXT#
|