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私の知ってる青空くんは危うい人だった。
家柄からして、そうなるのもムリはないのかも知れないけど、見ていられなかった。

けど、私は結局何一つしてあげれなくて。
彼は、全寮制の星月学園に行ってしまった。


それから、当然だけどあんまり青空くんを見ることはなくなった。
きっと彼にとっての私はほんとにクラスメイトAくらいだから、連絡なんてとれなくてそのまま忘れ去られるんだと、ずっと思ってた。


「苗字、さん?」

「え……あ、おぞら…くん?」

「やっぱり、お久しぶりですね。」


にっこりと笑って声をかけてくれたのは、あの青空くんで。
名前を覚えてくれてたこととか、声をかけてくれたことが嬉しくて、一瞬驚いたあと少し笑う。
前みたいな危うい彼はもういなくて、なんか変わった彼が眩しくてうまく物が言えない。


「まさかこんなところで会うなんて思いませんでした。」

「うん、私も、びっくりした。」

「ふふ、でもあなたに会えて嬉しいです。」

「え…?」


上品に笑う青空くんが何気なくこぼした言葉に目を見開く。
でも、きっと他意はないんだろうなって気付いて恥ずかしくなってごまかすように話題をかえた。


「そ、そういえば青空くん彼女とかできたの?」

「彼女、ですか。」


しまった。
そう思ったけど、もう遅くて。
なかったことにしてもらおうとしたけど考え出した青空くんに何も言えなくなった。
だって、気になる。


「そうですね、」

「うん…、」

「あなたはどうなんですか?」

「え、私…?」

「はい。」


まさかの質問返しに、戸惑う。
い、いないけど、って言ったら嬉しそうに微笑まれた。
どういう意味ですか。


「名前さんが好きです。
今から、僕の彼女になりませんか?」

「え…?」


あなたに拒否権はありませんけど、なんて。
よろしくお願いしますしか言えないじゃない。



拒否権なしの告白
(「変わったよね、青空くん。」)
(「あなたの愛らしさは変わりませんね。」)
(「……調子、狂う。」)




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